出羽三山

注連(しめ)と山摺(やまずり)入りの白衣─出羽三山に受け継がれる手しごと

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大注連と南天

巡礼を支える注連しめと行衣

出羽三山において、巡礼を支える二つの「手しごと」があります。
それは、肩にかける「注連しめ」と、身に纏う「行衣」です。

注連しめ

行者が肩にかける「注連しめ」。神社の鳥居や磐座いわくら注連縄しめなわが張られ、そこが聖域であることを示すように、注連しめをかけることは、自身を神聖な領域へと結び、祈りの世界へ足を踏み入れるためのしるしです。同時にそれは、山中での巡礼や祈りの場において、己を災いから遠ざけ、身心を清浄に保つ「結界」の象徴でもあります。

行衣

一方で、「行衣」は、山摺やまずりの入った白衣を指し、各霊場での朱印を重ねていく記録の衣です。巡礼の道のりをかたちとして受け止める行衣は、人々の祈りと人生を結ぶ尊い証となっていきます。

静謐な守りである「注連しめ」と、祈りの集積である「行衣」。

これらを身につけ、巡礼者は神域へと足を踏み入れます。そしてこの装束は、生涯にわたり持ち主を支える、確かな祈りのかたちとなっていくのです。

聖域へ入る覚悟の証─「大注連おおじめ」と「小注連こじめ

出羽三山の信仰において、注連しめは、神域へ入る覚悟を示し、身を清め、俗との境を明確にする役割を担う、巡礼に欠かせないものです。

この地の注連しめには、『大注連おおじめ』と『小注連こじめ』の二種が存在します。

中でも『大注連おおじめ』は、複雑な模様が幾重にも組み合わされた、手仕事の巡礼品です。

希少な手仕事─「大注連おおじめ

大注連おおじめは、宿坊ごとに代々その製法が受け継がれており、それぞれの檀那場で親しまれてきました。

けれども、時代の変遷とともに、この伝統を継承する宿坊は極めて少なくなり、現在では、大注連おおじめを仕立てることのできる継承者はごく限られております。

紐の種類にもよりますが、一本の大注連おおじめに使用する紐の長さは、20メートル以上。このため完成までには時間と手間を要します。

これほどの長さや、立体を含む模様を複雑に組み上げる作業には、言葉だけでは伝わりきらない細やかな要があります。実際に何本も手がける中で、少しずつ身についていくものがあり、その積み重ねがなければ、形が整わず、注連しめ本来の美しさには至りません。

このような積み重を経て、大注連おおじめ一目ひとめずつ綱み、仕立てられていきます。

祈りのかたち

真田延命院は、この大注連おおじめを受け継ぐ宿坊のひとつです。
手仕事によって仕立てられる注連しめには、先人たちが守り伝えてきた信仰と、出羽三山の精神が込められています。それは、目に見える装いであると同時に、祈りそのものを形にした存在ともいえるでしょう。

また、大注連おおじめは一つひとつに時間を要するため、年間に製作できる数に限りがございます。そのため、檀中の皆様をはじめとする、連年巡礼を続けておられる方々へ頒布しております。

動の修行を支える結界─「小注連こじめ

小注連こじめは、出羽三山において、参拝の際、より身近に目にすることが多いかもしれません。
大注連おおじめに比べると質実なつくりですが、その分、身につけやすく、「動」に適する実用を重んじた形でもあります。

月山を含む、お山駆けの際、小注連こじめは修行者の身を軽やかに、かつ清浄に保つ頼もしい結界となるのです。

真田延命院では、初めて巡礼で「ご祈祷」や「祈りの時間」を過ごされる方には、小注連こじめをご着用いただいております。神域と向き合う第一歩として、まずはこの清らかな結びを身につけいただくためです。

一般には外部に製作を依頼することも多い小注連こじめですが、当院では大注連おおじめと同様に、こちらも自家で仕立てています。
一つひとつに、巡礼の安全と祈りの成就を込め、整えています。

山摺やまずり

注連しめと共に、巡礼に使用される山摺やまずりを入れた白衣。

山摺やまずりは、木版として墨によって白衣に刷り入れ、朱印が押された伝統的な文様で、羽黒山・月山・湯殿山の名と、山を象徴する意匠が刻まれています。

近年では、機械印刷による山摺やまずりも多く見られるようになりましたが、当院では変わらず、手仕事で行っております。

受け継がれる版木

山摺やまずりに用いられる版木は、宿坊ごとに備えられているとされ、真田延命院にも受け継がれてきた版木がございます。
この版木は、状態を整えながら、今も大切に使い続けています。

刷りの工程では、墨を塗った版木の上に白衣をのせ、バレンを用いて、手作業で圧をかけて刷り上げます。
また、目印を用いて位置を正確に合わせ、文様を刷り、朱印を押すことで、一枚の白衣が完成するのです。

巡礼の歩みを刻む行衣

山摺やまずりが施され、注連しめとともに身につける白衣は、行衣と呼ばれ、巡礼者にとって特別な意味を持つものとなります。

巡礼の道のりの中で、行衣は各霊場にて朱印を受け重ね、紡がれる時間と呼応するように、唯一の風合いを帯びていきます。
刻まれる朱印は、歩みの証であり、祈りの積み重ねそのものと言えるでしょう。

巡礼を重ねることで、行衣は世にひとつだけの存在として生涯の守りとなります。そして、最期の旅立ちの際には棺に納められることもあるほど、人々の「祈り」と「人生」を結ぶ尊いものとなるのです。

巡礼を支える冬の手仕事

注連しめ山摺やまずりの制作は、毎年一月から四月にかけて行われます。

この時期、出羽三山は深い雪に包まれ、当院では檀家様のもとを訪ね歩く大切な季節を迎えます。
冬の静かな刻の中で、一目ひとめずつ結ばれる注連しめ、そして一着ずつ刷り上げられる山摺やまずり
この手仕事の積み重ねが、やがて来る春から夏山へと続く巡礼を支えていくのです。

この営みが、次世代へとつながり、巡礼者の心に寄り添うものとなれば幸いです。

出羽三山詣の宿  
宿坊 真田延命院

手向は古より白装束の参拝者が往来する宿坊街です。

宿坊では参詣される方々へ遠方からご来山される道中の苦労をねぎらい、
出羽三山詣へ真摯に向かうお姿に敬意をこめて、
手厚くおもてなしを行なって参りました。

真田延命院もまた、夏山の季節は、白衣を纏い、
お注連をかけ、三山へお山駆けを行う講の方々で賑わいますが、
一般のお客様もご宿泊頂いております。

代々出羽三山詣の講をお支えしてきた経験を活かし、
宿坊として登山やご参拝についてもご相談を賜ります。

出羽三山詣の宿

宿坊 真田延命院

出羽三山を巡る行は
身体を通して
精神に優しく呼応します
古より受け継がれてきた教えにも
山々での歩みの中にも
日々の暮らしにはない
気づきがあります
ほんのひとときでも
出羽三山に身を置くことで
祖先や家族を想い
自分自身と向き合うことのできる
大切な時間となりますように

石段
羽黒山石段
石段
石段山頂鳥居
石段

詳しくは
こちら

 sanadaenmeiin.jp

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