令和7年(2025年)
太多須嬉(ふとだすき)と真田延命院の神前の門前に生える南天
厳冬への備えと新年への営み
毎年11月後半になると、羽黒山の山麓に位置する宿坊街には、
静かな冬の訪れを感じさせる風景が広がります。
冬の澄んだ空気に包まれ、高い山々では早々と雪化粧をまとうこともあります。
この時期、出羽三山神社の三神合祭殿では、大切な節目の行事である『新嘗祭』が執り行われます。
『新嘗祭』は、その年の収穫に感謝し、五穀豊穣を神々に捧げる伝統行事です。
真田延命院では、例年、新嘗祭が終わると参籠所(さんろうじょ)としての役目を一旦終え、
翌年の5月頃まで宿泊客の受け入れを休止することになります。
一年の終わりと新年の始まりを紡ぐ
その後は本格的な冬支度が始まります。
冬山の厳しい寒さに備え、建物の補修や雪囲い、設備の点検などが行われるのです。
深々と降り積もる雪は、静けさをもたらしますが、
同時に長い冬を乗り切るための念入りな準備が欠かせません。
参籠所から神前に向かうための渡り廊下は、雪から守るために全て取り外され、軒下へ格納されます。
宿泊棟を含む家屋の雪囲いは、全て効率よく長く使えるよう、外注することなく行うため、
時間体力共に根気よく使い、丁寧に進められていくのです。
御神前は新年に向けて神棚や仏壇のしつらえも細心の注意を払って整えられます。
また、年末に向けて次々と頂く元旦祈祷のお申込みを拝受し、
皆様との時間を振り返りつつ、心を込めて準備を進めるのもこの時期の重要な務めの一つです。
このように、冬支度は、本年を振り返りつつ、新たな年に向けての心の準備期間とも言えるかもしれません。
新年を迎える元旦祈祷は、宿坊の新たな営みの始まりを告げる重要な行事です。
元日早朝、ご心願を込めたお札を前に家内安全や無病息災を願う祈りが捧げられます。
御神前に響き渡る祝詞と太鼓の音が、新年の厳かな空気をさらに高めていきます。
檀那場を巡り、信仰を繋ぐ
元旦祈祷が終わると、次は初祈祷や初午(はつうま)といった新年の行事が続きます。
これらの行事は、地域の方々とのつながりを深め、出羽三山信仰の息吹を今に伝える大切なものです。
そしてその後は、檀那場(だんなば)あるいは霞場(かすみば)と呼ばれる地域の檀家さまのお宅を
それぞれの地域に根付く信仰と伝統を守りつつ、一軒一軒、巡ることになります。
この巡行は、檀家さまの家庭や人々に新年の祝福と共に出羽三山信仰の教えを伝えるもので、
長年ご縁を繋いでいただいた方々との絆を深めるための大切な慣習でもあります。
なお、巡拝するお宅はご希望をいただいた檀家さまを中心にお伺いしており、
時代の変遷と共に変化する地域のニーズにも寄り添いながら、この伝統を継承しています。
また宿坊では、代々受け継がれている、『注連(しめ)』の制作も、この時期の営みとなります。
冬が終わり、新たな季節へ
長い冬が終わり、春が訪れる頃、真田延命院は再び参籠所として扉を開きます。
一年を通し、多くの人々にとって、信仰の場、
そして心のやすらぎを求める場所であり続けたいと考えております。
宿坊の冬、静寂の中に新たな生命が芽生える時
厳しい冬を乗り越え、春には再び新しい生命が芽生えるように、
真田延命院もまた、冬の静寂の中で、新たな年の準備を進めています。
冬は、表向きには静かなように見えますが、
その内側では春の訪れを待ちながら次の季節に向けた準備が着々と進められています。
このように、季節の移ろいと共に変化する宿坊の営みは、
自然と信仰が調和する出羽三山ならではの豊かな伝統文化を体現しているのです。
※掲載されているすべての写真は、真田延命院によって撮影されたものです。
出羽三山詣の宿 宿坊 真田延命院
*冬期間は雪のため宿泊施設はお休みになります
出羽三山詣の宿
宿坊 真田延命院
出羽三山を巡る行は
身体を通して
精神に優しく呼応します
古より受け継がれてきた教えにも
山々での歩みの中にも
日々の暮らしにはない
気づきがあります
ほんのひとときでも
出羽三山に身を置くことで
祖先や家族を想い
自分自身と向き合うことのできる
大切な時間となりますように
sanadaenmeiin.jp