聖山稲荷神社にて
Contents
松の勧進
寒い冬が訪れを告げる頃、出羽三山神社の伝統行事である「松の勧進」が始まります
例年11月中旬より始まるこの行事は、庄内地方の風物詩として息づいています
手向地域の神社を松聖(まつひじり)と補佐役の小聖(こひじり)が共に巡拝し
同時に山伏たちが法螺貝の音を響かせながら家々を訪れ
お米や浄財を受け、無病息災や家内安全を祈るお札を贈ります
この日以降、山伏たちはひと月以上の時間をかけ庄内平野を廻ることになり
集められた浄財は、出羽三山神社の「松例祭(しょうれいさい)」に充てられます
たくさんの行事や神事が行われる松例祭はこのようにして地域全体が一丸となって支えているのです
年末に行われる一連の伝統的な行程は、地域の結びつきを深め、新しい年を迎える準備として大切にされてきました
1年の締めくくりに向けて
「松の勧進」は寒さ厳しい冬の到来に彩りを添え
季節の変わり目を告げる1年の締めくくりに無くてはならないものです
向寒の折に聞く法螺貝の音は、過ぎ去る一年を連想させ
今年を振り返りつつ新しい年への想いを持つ時間でもあります
巡る季節の中で、同じ姿勢で家々を回り祈願する「松の勧進」の姿は
地域の人々に ”変わらずにあり続ける” 安心をもたらすものでもあるのかもしれません
松例祭
伝統を受け継ぐ冬の峰
日本の年末年始には数々の伝統行事が行われますが、山形県の羽黒山で繰り広げられる「松例祭」は、その中でも特に厳粛かつ雄壮な祭りとして知られています。この祭りは、羽黒山の修験者である「松聖(まつひじり)」が百日の勤行の満願の日を迎える、大晦日から元旦にかけて行われる重要な行事です。
松例祭は、夜を徹して多くの儀式が執り行われることから別名歳夜祭とも呼ばれ、その中でも圧巻なのが、国の重要無形民俗文化財に指定されている『大松明行事』です。この行事は、松聖による羽黒修験の四季の峰のひとつ「冬の峰」の修行の結願の一つでもあり、羽黒山の神聖な修験道の精神と歴史を象徴しています。
重要無形民俗文化財「大松明引き」
松例祭のクライマックスは、手向地区の若者たちが中心となって行われる「大松明引き」です。三神合祭殿から五番法螺の音が響き渡ると、若者たちは勢いよく大松明を引き起こし、巨大な松明が力強く庭上を進む姿は、見る者に圧倒的な迫力を与えます。若者たちが一心不乱に大松明を運ぶ雄健な姿は、まるで冬の厳しさと闘う古の修験者たちのようであり、冬の夜空を鮮やかに照らす松明は、山々に新しい生命の力を与えるかのように思われます。火の粉が舞い上がり、焚き上げられる松明の熱気が冬の冷たい風とは対照的な感覚を肌に与え、若者たちの力強い掛け声と山の静寂が一体となり、松例祭は日常から離れた非日常の空間を作り上げていくのです。
松例祭に宿る修験道の精神
大松明行事だけではなく松例祭ではたくさんの諸儀が執り行われますが、全体を通して、羽黒山の自然と共に生きる人々の信仰と伝統が色濃く表れています。松聖による百日間に及び五穀に稲霊の憑依を祈る行は、山岳信仰に基づく厳しいものであり、その修行の成果を神々に捧げ、来る年の豊穣や安全を祈る行為が、この祭りの根底にあります。修験道の教えに従い、人々が自然と調和し、互いに助け合いながら生きる精神が、この祭りの中で脈々と受け継がれているのです。
羽黒山の自然と共に生きる信仰
松例祭は、羽黒山の自然と伝統、そして修験道の精神が交差する伝統行事です。この祭りを通して、山岳信仰の深さと人々の絆が改めて感じられ、参加者は非日常の空気と山岳信仰の神秘を肌で感じることでしょう。冬の厳しさの中で行われるこの祭りは、新しい一年への希望と決意を象徴しており、その熱気と迫力は、訪れる人々に深い感銘を与え続けています。
松例祭引綱
手向を歩いていると、家の軒下に飾られた大きな綱を目にします。
この綱は、松例祭の大松明引きの神事にて用いられた引綱で、おまつりすることで除災(火防)招福のご利益があるとされています。
引綱について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
雪道の参拝と松例祭の情報
【 車 】
車でお越しの場合は、『スタッドレスタイヤの着用』・『安全を確保したペースでの運転』
『積雪や凍結の事前確認』が重要になります
また、適切な防寒装備を携行し、路面状態の把握と定期的な休憩を心がけてください
【履 き 物】
足元は歩き慣れた長靴など、深い雪にも対応できる滑りにくいものをお勧めしております
安全を配慮し、新しい年を健やかにお迎えいただけますよう心よりお祈り申し上げます
出羽三山詣の宿 宿坊 真田延命院
*冬期間は雪のため宿泊施設はお休みになります
出羽三山詣の宿
宿坊 真田延命院
出羽三山を巡る行は
身体を通して
精神に優しく呼応します
古より受け継がれてきた教えにも
山々での歩みの中にも
日々の暮らしにはない
気づきがあります
ほんのひとときでも
出羽三山に身を置くことで
祖先や家族を想い
自分自身と向き合うことのできる
大切な時間となりますように
sanadaenmeiin.jp